日本の気候は四季がはっきりしているため、一年を通じて快適に過ごすためには適切なスーツの生地選びが欠かせません。種類や仕立ての方法を意識することで、暑い夏も涼しく、寒い冬も暖かく過ごせるスーツを選ぶことができます。
本記事では、春・夏・秋・冬それぞれのシーズンに適したスーツの生地や着こなしのポイントを詳しく解説します。
季節別に最適なスーツの生地は?
快適さを決める要素のひとつが生地の種類です。素材の違いによって通気性や保温性が変わり、季節ごとの快適さに大きな影響を与えます。それぞれの季節に合った生地を選ぶことで、着心地の良さを最大限に高められます。
春・秋に適したスーツ生地
春と秋は、朝晩と日中の寒暖差が大きくなる季節です。そのため、適度な保温性と通気性を兼ね備えた生地が求められます。ウール100%のスーツが一般的に推奨されており、特にツイル織りのウール生地は適度な厚みを持ちながら通気性を確保し、快適な着心地を提供します。
さらに、スーパー100’s~120’sのウール生地を選ぶことで、上品な光沢感と柔らかな質感を兼ね備えたスーツを手に入れることができます。これにより、着心地の良さとエレガントな印象を両立できます。肌寒い日には、ベスト付きのスリーピーススーツを取り入れることで、体温調整がしやすくなります。ベストを脱げば軽やかに、着用すれば暖かくといった柔軟な対応が可能です。
また、ウールとカシミヤを混紡した生地は、春秋のスーツとして最適です。カシミヤはウールに比べて保温性が高く、柔らかな風合いを持っているため、肌寒い日でも快適に過ごせます。さらに、撥水加工が施されたウール生地を選べば、急な雨に対応できるため、天候が変わりやすい春や秋に特におすすめです。
夏に快適なスーツ生地
日本の夏は高温多湿であるため、スーツの生地選びにおいて最も重視すべきポイントは通気性と軽さです。リネンやコットン混紡のスーツは、軽くて風通しが良く、涼しい着心地を提供します。リネンは通気性に優れており、汗をかいてもすぐに乾くため、蒸れにくいのが特徴です。ただし、シワになりやすいというデメリットもあるため、シワが目立ちにくいコットン混紡の生地を選ぶのも一つの方法です。
サマーウールは、ウール本来の高級感を維持しながら、薄手で軽量な仕上がりになっています。吸湿性と放湿性が高いため、汗をかいても快適な着心地を保てる点が魅力です。また、トロピカルウール(ウール100%で軽量かつ通気性の高い生地)やシアサッカー(波状のシワ加工が施され、肌に密着しにくい素材)は、夏のスーツ生地として特に優れています。
さらに、裏地のないアンコン仕立てのスーツを選ぶことで、より軽快な着心地を実現できます。アンコン仕立ては、スーツの裏地や芯地を省略することで、涼しさと柔らかなシルエットを両立させる仕立て方です。ジャケットを羽織る際の窮屈感を軽減し、より快適に過ごせるようになります。
冬に暖かいスーツ生地
冬のスーツは防寒性が最優先されます。フランネルやツイード、ヘビーウールといった厚手の生地を選ぶことで、しっかりと保温できます。フランネルは、ウール生地に起毛加工を施したもので、肌触りが柔らかく、暖かさをしっかりと保持できる特徴があります。そのため、寒さが厳しくなる冬のスーツ生地としては最適です。
一方、ツイードは耐久性が高く、防寒性にも優れています。スコットランド発祥のツイードは、厚手の織り構造により防風効果があり、コートなしでも一定の暖かさを保つことができます。ビジネスシーンに取り入れる場合は、ヘリンボーン柄やチェック柄など、落ち着いたデザインを選ぶとフォーマル感を損なわずに着こなせます。
寒冷地では、カシミヤ混のスーツを選ぶのも一つの手です。カシミヤはウールよりも繊維が細かく、保温性と肌触りの良さが特徴です。ウール100%のスーツよりもさらに暖かく、かつ軽やかな着心地を実現できます。特に、カシミヤ混のコートやインナーにウール100%のベストを重ねることで、さらに快適な防寒対策が可能です。
また、冬のスーツには裏地がしっかりと付いたものを選ぶことも重要です。フルライニング仕様のスーツなら、冷たい風の侵入を防ぎ、体温を逃がしにくくなります。加えて、インナーにヒートテック素材を活用し、体温を維持しながらスーツのシルエットを崩さないよう工夫すると、より快適に冬を過ごせます。
季節ごとのスーツの着こなしポイント
適切な生地を選ぶことに加えて、季節ごとに着こなしを工夫することで、より快適に過ごせます。気候に合わせたスタイルを取り入れ、洗練された印象を与えましょう。
春・秋のスーツの着こなし
気温が変化しやすい春と秋は、インナーの調整がポイントになります。薄手のウールスーツにカーディガンやベストをプラスすることで、朝晩の冷え込みに対応しながら、日中は軽快なスタイルをキープできます。
ネクタイの選び方も重要で、春には明るめのパステルカラー、秋には落ち着いたブラウンやワインレッドを取り入れると季節感が出ます。靴にはスエード素材のものを選ぶと、季節感を演出しながら上品な印象を与えられます。
夏のスーツの着こなし
夏は暑さ対策が重要になります。軽量なサマーウールやリネン混紡のスーツを選び、裏地の少ないアンコン仕立てのものを取り入れることで、快適さを向上させられます。
シャツにはリネンやシアサッカー素材を選ぶと、通気性が向上し、汗をかいてもすぐに乾きます。靴はローファーやスリッポンを選ぶことで、軽快なスタイルを演出できます。また、ネクタイを省いたノーネクタイスタイルも、暑い季節には適した選択肢です。
冬のスーツの着こなし
冬は防寒対策をしつつ、重くなりすぎない着こなしを意識することが重要です。スーツの下にハイゲージのタートルネックニットを合わせることで、上品かつ防寒性の高いスタイルを作ることができます。インナーにはヒートテック素材のシャツを取り入れると、見た目を崩さずに暖かさをキープできます。
靴はレザーソールのオックスフォードシューズやブーツを取り入れると、冬らしいコーディネートになります。さらに、カシミヤのマフラーや手袋を合わせることで、エレガントな印象を強調できます。
まとめ
スーツの生地選びは、季節ごとの快適さを左右する重要なポイントです。春・秋はウールスーツで温度調整を行いましょう。夏は通気性の良いリネンやサマーウールを選び、冬はフランネルやツイードで防寒対策を万全にすることが理想的です。
適切な生地を選びつつ、インナーや小物を上手に組み合わせることで、快適で洗練されたビジネススタイルを実現できます。年間を通してTPOに合った着こなしを心掛け、スタイリッシュで快適なスーツライフを楽しみましょう。